前回の記事では、ヒト・モノ・コトの3要素を視点として「なぜ売れるのか?」を見つけ出す方法をご紹介しました。
今回のテーマは、もう一歩先へ。
「売れる理由」は、見つけるだけでは不十分です。
それをどう育てていくかが、ECの成功と継続性を左右するカギとなります。
今すぐの売上ばかりを追っていませんか?

EC運営がうまくいかないと、「とにかく今月の売上を…」と焦ってしまいがちです。
しかし、多くの重要な要素は“コツコツ育てるもの”であり、一朝一夕では身につきません。
本書ではこう指摘されています。
「3要素(ヒト・モノ・コト)のうち、特にヒトやコトは“一朝一夕”に育つものではないのです。」(書籍より引用)
ヒト要素は…
「店主の専門知識や信用力、SNSでの影響力はコツコツ継続してこそ育つ」
コト要素は…
「提案軸や世界観を磨き上げるには顧客理解やブランディングの試行錯誤が必須」
広告を回すより先に、“土台”を作れているか?──それが問われる時代です。
失敗例から学ぶ:「安売り戦略」がブランドを壊すことも

本書に登場するE社のケースは、その典型です。
「広告出稿を繰り返すだけで新しい提案やブランドストーリーを作り込むことをしなかった。」
「次々と割引キャンペーンやポイント還元に走り、“安売り店”のイメージが定着。」(書籍より引用)
その結果、「高品質を求める層」から見向きもされず撤退。
コト要素(世界観・打ち出し)を育てていなかったため、「どこにでもある店」になってしまったのです。
将来像から逆算して、「育てる戦略」を考える
焦って短期施策ばかり打っても、競合との違いはつくれません。
本書は、次のようにアドバイスしています。
「最初から完成度100点のビジネスモデルやブランドを作るのは難しい」
「将来像を描いておくと、日々の行動が変わる」(書籍より引用)
たとえば──
- ヒト要素を育てたいなら:SNSやリアルイベントで顔を出し、発信力・信頼感を積む
- モノ要素を育てたいなら:OEM先との連携、品質向上、リサーチを地道に
- コト要素を育てたいなら:提案軸のテスト、顧客調査、世界観づくりを継続的に
OEM(Original Equipment Manufacturer)サービス=既存の工場に自社ブランドの商品を委託して作ってもらう仕組み
ECは「育てるビジネス」です。だからこそ、中長期の視野が問われるのです。
顧客との対話が、最も確実な“成長装置

前回の記事でも触れましたが、やはり最強のヒントは「顧客の声」にあります。
「“どうすればお客様が買ってくれるのか?”を知るために、一番確実な方法は、やはり“お客様に直接聞く”ことです。」(書籍より引用)
さらに、こう続きます。
「口コミやレビューを待つだけでなく、SNSのDMやメルマガ、問い合わせフォームなどを活用して、1対1で突っ込んだ質問をするのがおすすめです。」(書籍より引用)
「なぜその商品を選んだのか?」「使ってどうだったか?」
──この問いを丁寧に積み重ねることで、ヒト・モノ・コトは“磨かれていく”のです。
自分の意志と重ねることで、“唯一無二”のECになる

最後に忘れてはならない視点がこれです。
「小さなECサイトや個人事業の場合は、“自分が本当にやりたいこと”“持っているリソースや強み”と掛け合わせたほうが、ユニークな差別化がしやすいです。」(書籍より引用)
大手ECやメーカーが追いかける「多数派ニーズ」ではなく、
自分らしさ × 顧客ニーズの重なりを見つける──これが、ファンを生み出す原点になります。
書籍では、育て方の具体例やヒアリング術も掲載
本記事は『絶対に失敗しないECのやり方』第2章の一部をもとに作成しています。
本書ではさらに、以下のような内容を詳しく解説しています。
- 育てるべき「ヒト・モノ・コト」の戦略
- 顧客の声からヒントを引き出すインタビューの“質問例”と“深掘り術”
- 成功・失敗の実例つきで、育成のロードマップを提示
「なんとなく売っている状態」から脱し、
“選ばれるブランド”を地道に作り上げたい人にこそ読んでいただきたい一冊です。
読者の声(口コミ)

「売上が伸び悩んでいた理由が“なんとなく”から“構造的”に理解できました」

「小規模でも自分らしい戦い方があると気づけた。広告にビクビクしなくなった」

「難しい言葉が少なく、具体例とチェックリストが多くて助かる。EC1〜2年目の人に絶対おすすめ」
まとめ|「今すぐ売る」ではなく、「育てて売れ続ける」へ
短期的な打ち手だけでは、ECは必ず頭打ちになります。
“売れる理由”を見つけ、育て、積み上げていくことで、初めて売上は安定していくのです。
「5年後、どんなブランドになっていたいか?」
──その未来から逆算して、今日のECを動かしてみませんか?

絶対に失敗しないECのやり方
著者:広瀬 裕 鈴木 陽介
定価:1200円
出版社:株式会社インターコード
本書について
個人〜中小規模のEC事業者に向けて、
「どうすれば安定して売れ続ける仕組みをつくれるのか?」を体系的に解説した一冊です。