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言葉の使い方『日本語の存在表現について』

言葉の使い方『日本語の存在表現について』

コールセンターのお仕事は、言葉を大切にする仕事です。
日々の勉強は当然のことですが、お恥ずかしい話、周囲の方からご指摘を受け、誤った言葉の使い方をしていたことに気づくこともしばしばです。
反対に、誰かが誤った言葉の使い方をしていたとき、その内容を聞いて、指摘したり、こういった表現の方がよいと補足したりすることで、その人だけでなく、私自身がより理解を深めることができたということもあります。
何事も役に立たないこと・学びにつながらないことはないのだなということを感じます。
私が学んだことを書くことで、他の方に少しでも何か返す部分があればなと思い、まとめてみました。

言葉について考えていて、日本語の敬語表現、特に存在表現がややこしいなということを思い、少し勉強してみることにしました。
日本語には、いる、いらっしゃる、おる、おります、ある、あります、などなど、敬語の意味を含むもの・含まないもの、あれこれ多数の表現があります。
昔、古典の授業で勉強した、あり、をり、はべり、いまそがり……というものが頭をよぎりますが、呪文のようにめぐるだけで、難しかった覚えがあります。
きちんと見なおしてみると、うまく使い分けができるようになるかもしれません。

さて、日本標準語の存在表現について、実はすごくおもしろい使い方をするのだそうです。
普段意識せずに使っているとわかりませんが、改めて見なおしてみることにします。
次の問題を見てみましょう。

問・次の( )に「いる」と「ある」のどちらが入るかこたえなさい。
1.公園の近くの水族館にはたくさんの魚が(  )。
2.商店街の魚屋さんにはたくさんの魚が(  )。

1は「いる」、2は「ある」を使うのは日本語を母語としている人ならすぐにわかる問題です。
しかし、初めて日本語を勉強する外国人にはこの使い分けがすごく難しいのだそうです。
もし、あなたが二つの違いについて聞かれたら、どう答えるでしょうか。

一番簡単なのが、「生きているものは『いる』、死んだら『ある』」という説明かと思います。
確かに水族館の魚は生きていて、魚屋の魚は死んでいるので、一見正しい説明のように感じます。
では、次の文章を見てみましょう。

3.鈴木さんの畑にはたくさんのきゅうりが(  )。
4.山田さんの八百屋にはたくさんのきゅうりが(  )。

どうでしょうか。
植物にはどちらも「ある」を使います。
「生きているか死んでいるか」で区別しているという説明は、どうやら少し違うようです。

こういった「いる」「ある」の使い分けの説明を、文法の世界では「有情物の存在には「いる」、非情物の存在には「ある」を使う」と説明するそうです。
ここでいう「情」というのは「心」という意味ではなく、「自発的に動くことができる」という程度の意味です。

少しややこしくなってしまいましたが、自発的に動けるものについては「いる」、そうでないものは「ある」を使うと考えてよさそうです。
どういったものに「いる」を使い、どういったものに「ある」を使うか、または使えないかを考えてみるとおもしろいかもしれません。

では、次の文章はどうでしょうか。

5.わたしには兄がふたりいます/あります

どちらでもいいという人もいれば、「いる」しか使えないと考える人もいるでしょう。
先に述べた説明では、「いる」が正解のような気がします。
こういった文章で「ある」を使うのは、実は少し古めかしい表現なのです。

少し前までは、恒常的な特徴をもつ人物(親戚や友人、一般的そのような性質を持つ人々)の存在については、「いる」よりも「ある」を使うのが一般的でした。
今でも、少し固い文章や、表現のときには「ある」を使うことがよいとされる傾向があります。

しかし、今ではこのような場合でも「いる」「いない」という表現を使うのが一般的になっています。
長い時間をかけて、言語が変化してきたのが見てとれます。
昔の小説などを読むと、人物に対して「ある」、「ない」という表現を使っている文に出会うことがあるかもしれません。
時代が下ってくるにつれて、両方使っている過渡的なもの、もしくは、ほぼ「いる」、「いない」しか使わないものもあります。

さらに、日本語の敬語表現にはさまざまなものがあります。
存在動詞に敬語の意味がくわわると、たくさんの変化や使い分けがうまれます。
日本語を母語にする人でも敬語が難しく、苦戦することになるのは、このさまざまな言い回しや使い分けが原因です。
時代ごとに変化し、すたれていった言葉も多くあります。
こういった変遷を見ていくのもおもしろいです。

日本語のように存在をあらわす動詞に2種類あり、それぞれ使い分けがされている言語は実は世界の言語の中では非情に珍しいそうです。
「いる」と「ある」の使い分けについて、使う機会がありましたら、ぜひ考えてみてください。

以上です。
次回も何か学んだことをまとめることができたらと思います。
よろしくお願いします。

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